【4282】EPSホールディングス、2019年度決算【IRをレポート】しました。EPSホールディングスがどんな一年だったのか?売上は?利益は?現状はどんな状況?稼ぎ頭はなに?今どんなところに力を入れているの?今後どこに向かおうとしてるの?読み解きます。

損益計算書
損益計算書直近5ヵ年の推移
単位:百万円
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
売上高 | 45,202 | 52,703 | 60,482 | 65,769 | 69,009 |
営業利益 | 5,482 | 6,224 | 7,591 | 7,193 | 6,279 |
経常利益 | 5,362 | 6,589 | 7,809 | 7,436 | 6,271 |
当期純利益 | 2,163 | 3,966 | 4,663 | 4,388 | 3,633 |
損益計算書直近5ヵ年グラフ(売上高・営業利益)

2019年度期初の予想では売上高72,000百万円(9.5%増)、営業利益7,200百万円(0.1%増)、経常利益7,350百万円(1.2%減)、当期利益4,700百万円(7.1%増)となっていましたが、第三四半期発表時に下方修正され、売上高68,100百万円、営業利益5,700百万円、経常利益5,800百万円、当期利益3,000百万円となりました。この下方修正された計画については達成していますが、この下方修正された主な理由としてはCRO事業での①試験規模の小型化・グローバルCRO競争環境が厳しくなった②プロジェクトマネジメントがうまく機能していない③経営体制の次世代移行により一時的なマネジメント力の低下・人材リソースマネジメントが計画通り進んでいないとのことです。また、売上高営業利益率も中期経営計画より割れており気になるところです。2018年度の減益は計画に組み込まれており、予想通りでしたが「人材リソースマネジメントが計画通り進んでいない」という事ですので、2018年度より投入している販売促進費が先行していて売上増加に対して人材がついていけてない状況がある気がします。
貸借対照表
貸借対照表5ヵ年推移
単位:百万円
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
流動資産 | 29,640 | 36,333 | 44,023 | 40,326 | 40,834 |
固定資産 | 9,746 | 16,196 | 20,322 | 25,078 | 25,732 |
流動負債 | 11,052 | 13,395 | 15,287 | 14,587 | 15,991 |
固定負債 | 4,745 | 4,770 | 4,195 | 4,073 | 4,238 |
純資産合計 | 23,590 | 34,364 | 44,862 | 46,743 | 46,337 |
貸借対照表5ヵ年推移グラフ

貸借対照表の内容に全くと言って問題がありません。自己資本比率も65.0%と高く、有利子負債も2,138百万円で比率も3.2%と低い水準です。また2期連続で自己株式取得を行っています。2019年度は減益のためROEの悪化となっていますが、自己株式の取得は純資産を減少させるため、ROEを高めることとなるため、株主にとっては好材料の一つではないでしょうか。
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書5ヵ年推移
単位:百万円
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
営業活動によるCF | 4,186 | 5,186 | 7,835 | 3,465 | 5,725 |
投資活動によるCF | -1,276 | -1,315 | -3,726 | -3,489 | -956 |
財務活動によるCF | -83 | -2,515 | 2,005 | -4,259 | -4,324 |
キャッシュフロー計算書5ヵ年推移グラフ

フリーキャッシュフローは微増となっていて、現預金の増加はほとんどありませんが、全くもって心配する内容ではないと思っていますが、中期経営計画にもあり、国内の全セグメントでその計画がある、M&Aで投資活動によるCFがもう少し増加してもいいのかなと感じていて、少し守り過ぎなのでは??と感じています。
セグメント分析
セグメント別売上高推移
単位:百万円
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
CRO事業 | 25,219 | 28,123 | 30,004 | 31,004 | 32,362 |
SMO事業 | 6,486 | 10,961 | 14,016 | 14,297 | 14,339 |
CSO事業 | 6,788 | 7,509 | 8,303 | 7,813 | 9,399 |
Global Research事業 | 2,773 | 4,060 | 4,816 | 4,942 | 3,990 |
益新事業 | 4,274 | 3,957 | 6,119 | 11,093 | 11,543 |
合計 | 45,202 | 52,703 | 60,482 | 65,769 | 69,009 |
※合計はセグメント売上合計ではなく、連結売上高を記載してます。

セグメント売上高伸び率
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
CRO事業 | 11.5% | 6.7% | 3.3% | 4.4% | |
SMO事業 | 69.0% | 27.9% | 2.0% | 0.3% | |
CSO事業 | 10.6% | 10.6% | -5.9% | 20.3% | |
Global Research事業 | 46.4% | 18.6% | 2.6% | -19.3% | |
益新事業 | -7.4% | 54.6% | 81.3% | 4.1% | |
合計 | 16.6% | 14.8% | 8.7% | 4.9% |

セグメント利益推移
単位:百万円
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
CRO事業 | 5,491 | 5,985 | 6,653 | 6,651 | 5,459 |
SMO事業 | 691 | 610 | 1,698 | 1,269 | 1,679 |
CSO事業 | 383 | 426 | 486 | 384 | 489 |
Global Research事業 | -31 | 183 | -536 | 13 | -3 |
益新事業 | 30 | -31 | 251 | 121 | 381 |
セグメント利益合計 | 6,564 | 7,173 | 8,552 | 8,438 | 8,005 |
全社費用 | -1,082 | -949 | -961 | -1,245 | -1,726 |
営業利益 | 5,482 | 6,224 | 7,591 | 7,193 | 6,279 |
※全社費用は独自計算で連結営業利益からセグメント営業利益合計を差し引いて計算しています。
セグメント利益率推移
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
CRO事業 | 21.8% | 21.3% | 22.2% | 21.5% | 16.9% |
SMO事業 | 10.7% | 5.6% | 12.1% | 8.9% | 11.7% |
CSO事業 | 5.6% | 5.7% | 5.9% | 4.9% | 5.2% |
Global Research事業 | -1.1% | 4.5% | -11.1% | 0.3% | -0.1% |
益新事業 | 0.7% | -0.8% | 4.1% | 1.1% | 3.3% |
セグメント利益合計 | 14.4% | 13.1% | 13.5% | 12.2% | 11.2% |
営業利益 | 12.1% | 11.8% | 12.6% | 10.9% | 9.1% |
2019年度一番売上高が伸びているセグメントはCSO事業です。こちらの内容を確認すると、既存事業の売上拡大・ACメディカル(株)の買収で増収となっていますが、2018年度は減収していたこと、また既存事業がどのくらい伸び程いるのかが記載がないため、実際どの程度の伸びかがわかっていません。CRO事業・SMO事業の伸び率が縮小していることから国内事業の既存事業が頭打ち感が否めません。海外事業に関してはGlobalResearch事業で大きく減収しています。内容はグローバルCROとの競争激化により新規案件の獲得が伸び悩んでいることとのことですが、2020年度計画では27.8%増の5100百万円となっています。海外に関してはまだまだ伸び代はありそうです。セグメント営業利益に関しては、CRO事業の営業利益率の低下が気になります。内容はモニタリングの稼働率低下が大きく影響となっています。GlobalResearch事業に関しては営業損失を計上していますが、損益分岐点付近に位置していて、売上増加となれば営業利益確保が見込まれると思っています。全社費用に関しては、販売促進費の影響で増加している感じでしょうか。
経営指標
・・・・・・収益性分析一覧
収益性分析一覧
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
売上高総利益率 | 29.3% | 29.5% | 31.5% | 35.4% | 35.6% |
売上高営業利益率 | 12.1% | 11.8% | 12.6% | 10.9% | 9.1% |
売上高経常利益率 | 11.9% | 12.5% | 12.9% | 11.3% | 9.1% |
売上高当期純利益率 | 4.8% | 7.5% | 7.7% | 6.7% | 5.3% |
売上高販管費率 | 17.2% | 17.7% | 19.0% | 24.5% | 26.5% |
ROA | – | 14.34% | 13.36% | 11.46% | 9.50% |
ROE | – | 13.91% | 12.33% | 10.28% | 8.37% |
安全性分析一覧
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
流動比率 | 268.2% | 271.2% | 288.0% | 276.5% | 255.4% |
当座比率 | 126.4% | 119.6% | 149.0% | 122.4% | 108.1% |
現預金月商比率 | 3.71 | 3.65 | 4.52 | 3.26 | 3.01 |
自己資本比率 | 58.9% | 64.3% | 65.0% | 65.3% | 65.0% |
固定比率 | 46.1% | 48.5% | 50.1% | 60.2% | 60.7% |
固定長期適合率 | 37.6% | 42.5% | 45.4% | 54.8% | 55.2% |
営業キャッシュフロー | 4,186 | 5,186 | 7,835 | 3,465 | 5,725 |
投資キャッシュフロー | -1,276 | -1,315 | -3,726 | -3,489 | -956 |
財務キャッシュフロー | -83 | -2,515 | 2,005 | -4,259 | -4,324 |
活動性分析一覧
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
総資本回転率 | – | 1.15 | 1.03 | 1.01 | 1.05 |
総資本回転期間 | – | 317 | 354 | 361 | 348 |
固定資産回転率 | – | 4.06 | 3.31 | 2.90 | 2.72 |
売上債権回転率 | – | 4.79 | 4.80 | 4.56 | 4.33 |
売上債権回転期間 | – | 76 | 76 | 80 | 84 |
生産性分析一覧
決算期 | 2015/9 | 2016/9 | 2017/9 | 2018/9 | 2019/9 |
一人当たり売上高 | – | 11.58 | 11.98 | 12.06 | 11.58 |
一人当たり経常利益 | – | 1.45 | 1.55 | 1.36 | 1.05 |
一人当たり当期利益 | – | 0.87 | 0.92 | 0.80 | 0.61 |
見るべきポイントとしてあげたのは収益性一覧ですが、こちらの内容では、売上高総利益率では数値が改善してるにもかかわらず、上記でずっと説明してきたところ(販管費)で悪化しているため、営業利益率以下では、2期連続での悪化となっています。こちらは中期経営計画にあったことから織り込み済みと思われますが、注視する部分でもあると思います。当期利益の減益もありROEも悪化しています。
業界平均比較
業界平均5ヵ年比較
上:EPSホールディングス(株) 下:業界平均
決算年 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
売上高成長率 | ー | 8.14 | 16.59 | 14.76 | 8.74 |
ー | -0.17 | 2.90 | 0.27 | 4.17 | |
営業利益成長率 | ー | 22.07 | 13.54 | 21.96 | -5.24 |
ー | -40.21 | 50.92 | 2.18 | 7.73 | |
経常利益成長率 | ー | 26.40 | 22.88 | 18.52 | -4.78 |
ー | -39.34 | 47.60 | 4.00 | 7.64 | |
当期利益成長率 | ー | 18.33 | 83.36 | 17.57 | -5.90 |
ー | -15.69 | 16.77 | 9.67 | 6.59 | |
自己資本比率 | 54.54 | 58.95 | 64.35 | 64.99 | 66.51 |
75.86 | 65.41 | 65.90 | 63.88 | 64.51 | |
ROE | ー | 10.27 | 13.91 | 12.33 | 10.28 |
ー | 6.31 | 7.75 | 8.45 | 8.75 |
利益率以外のところで業界平均超えとなっています。ここで当期利益の悪化となったにもかかわらずROEが業界平均を上回っていることは投資家として評価が高いのではないでしょうか?
19年9月期 総括
2019年度は増収減益と当初の計画も割れるなどのあまりいい決算ではなかったと思います。ただEPSホールディングス単体や計画割れなどを見るとそうですが、業界平均よりもいい数字も出していますので、今後どのようにして行くかというところがポイントになりそうです。
20年9月期 業績予想
2020年9月期は売上高72,500百万円(5.1%増)、営業利益6,170百万円(1.7%減)、経常利益6,320百万円(0.8%増)、当期利益3,540百万円(2.6%減)となっており、具体的な内容は、施策面では、各セグメントの組織、事業構造及びマネジメントの課題を抽出・把握し 解決のための支援を行うほか、グループ一体的な営業活動を行う。人事面では、グループ横断的な人事施策を策定する、マネジメント人材の育成を強化し、グ ループ全体の人員構造改革を行う。となっています。中長期的にはM&Aの模索、新規事業創出のためのインキュベーション投資などの資本参加などによる事業拡大およびこれに必要な先行投資を積極的に進めていく事になっています。
今後の注目点
2019年9月期総括では今後どのようにしていくかという風に記載をしたのですが、実は2019年11月に中期経営計画の下方修正が出されています。中期経営計画発表当初と比べて、売上高は20%減、営業利益は36%減となっています。今後の注目点としては2021年度の決算がこの数字を達成するのかがポイントとなってきそうです。